リンパ浮腫|症状・診断・病期・治療

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Lymphedema

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは

体にたまった老廃物を運搬するリンパ管が何らかの原因によりふさがり、皮膚や脂肪組織の間に体液(リンパ)がたまった結果、腕や脚にむくみ(浮腫)が生じた状態のことをさします。

生まれつきリンパ管やリンパ節の発育が悪いために全身のリンパ液を処理できずに発症する一次性(原発性)リンパ浮腫と、子宮がんや乳がん手術の際に、がん細胞のフィルターの役目を担うリンパ節を切除したり、放射線を照射したことで機能低下を起こして発症する二次性(続発性)リンパ浮腫があり、二次性リンパ浮腫が全体の80~90%を占めています。

リンパ浮腫の症状

リンパ浮腫の一般的な特徴は、皮膚の色の変化がない(左右差のない)、無痛性のむくみです。二次性リンパ浮腫では、手術後すぐに生じる場合もあれば、5年・10年経過して発症する場合があります。
発症当初はpitting edema(圧痕性浮腫:指で圧迫すると跡がつくむくみ)であったものが、リンパの慢性うっ滞により脂肪増生や線維化が少しずつ進行し、non-pitting edema(非圧痕性浮腫:指で圧迫しても跡がつかない硬い浮腫)を呈するようになります。時として蜂窩織炎やリンパ漏などを発症することがありますが、適切な治療を行わずに放置したり、炎症を繰り返すことにより、病態が段階的に悪化して、象皮症(皮膚や皮下組織が著しく増殖して象の皮膚の様相を呈する状態)のように重症化したり、仕事や家事に支障をきたし精神的苦痛が生じることでQOL(生活の質)の低下を引き起こします。

浮腫の鑑別とリンパ浮腫の病期診断

問診や視触診により比較的容易に診断できますが、静脈性浮腫などとの鑑別や病期の評価を行う上ではアイソトープによるリンパ管造影(リンパシンチグラフィー)が有用で、国際リンパ学会でも推奨されています。

当院で施行しているリンパシンチグラフィー
(two-phase lymphscintigraphy)

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アイソトープを投与

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アイソトープを投与してから5~15分の早期に撮像することで残存するリンパ駆出能(リンパをくみ上げるポンプ機能)を評価します。

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さらに30、60分後に撮像することにより、リンパ管内圧上昇に伴うリンパ管の弁不全により生じる皮膚への逆流現象(dermal backflow)などの2次的な変化を評価します。

非浮腫側含めてリンパの流れを経時的かつ視覚的に捉えることが可能であり、病期診断のみならず後述する手術適応の有無や治療効果を判断する上でも非常に重要な検査となります。

リンパシンチグラフィーによるリンパ管機能評価
two-phase lymphscintigraphy(LSG)

リンパシンチグラフィー(two-phase lymphscintigraphy)によるリンパ管機能評価.early phase(早期相)ではリンパ駆出能を、late phase(晩期相)では皮膚への逆流現象(dermal backflow)などの2次的な変化を評価する。

リンパシンチグラフィーによる重症度判定
リンパシンチグラフィーによる重症度判定

重症度が上がるほどリンパ駆出能が低下している。

インドシアニングリーン(ICG)を使用した蛍光リンパ管造影

インドシアニングリーン(ICG)を使用した蛍光リンパ管造影は、近赤外線カメラでリアルタイムにリンパの流れを可視化できるため、リンパ管細静脈吻合術を行う上での機能的リンパ管のマッピング(リンパ管の実際の走行をマジックなどで目印をつける)や術後吻合部の開存評価(吻合部がつながっている状態か否かを視覚的に評価する)に有用です。

ICG蛍光造影法による機能的リンパ管の同定法

切開せずに体表からリンパ駆出能が保たれたリンパ管の走行を観察することができる。

ICG蛍光造影(動画)
ICG蛍光造影
正常なリンパ管

正常なリンパ管

異常なリンパ管

異常なリンパ管(dermal backflow)

リンパ浮腫の病期

リンパ浮腫は次のような病期に分類されています。

国際リンパ学会による病期分類

ISL0期

リンパの輸送に障害があるが、腫脹が明らかでなく、臨床的には浮腫を認めない状態。浮腫を認めるようになるまで数ヶ月から何年にもわたって続くことがある。

ISL1期

疾患の発症初期にあたる。比較的タンパク成分が多い組織間液が貯留しているが、四肢を上げることにより軽減する可逆性の時期。指で圧迫することにより圧迫の痕(あと)が残る。

ISL2前期

四肢の挙上だけでは浮腫が改善しなくなり、圧迫の痕がはっきりとする。

ISL2後期

指で圧迫しても圧迫の痕ができにくくなり、横になるだけではむくみの軽減もみられなくなり組織の線維化がみられるために軽快しない時期。

ISL3期

組織が硬くなり(線維性浮腫)、圧迫の痕は生じない。肥厚、色素過剰、皮膚の皺襞(しわ)の増生、脂肪沈着などの皮膚変化を生じる。

当科でのリンパ浮腫に対する外科的治療

リンパ浮腫の治療には大きく保存的治療(理学療法)と、外科的治療(手術療法)の二つに分けられます。理学療法には用手的リンパドレナージ(マッサージ)、弾性包帯やストッキングによる圧迫、運動療法などがあります。リンパ浮腫に対するこれらの理学療法は一定の効果が得られる反面、効果を維持するためには治療を継続する必要があります。

リンパ浮腫に対する外科的治療は1900年代の初めから組織切除や直接的または間接的リンパ誘導法など様々な治療法が考案され試みられましたが、過大な手術侵襲や、不十分な治療成績などの理由により、多くの外科的治療法は浸透するに至っていません。

一方、最近の形成外科領域における超微小(血管)外科(supermicrosurgery:0.8~0.3mmの血管吻合)の技術と手術器具の進歩によって、従来の外科的治療の効果を上回るリンパ管静脈吻合術(lymphatico-venous anastomosis:LVA)が開発され、本邦の多くの施設で行われるようになりました。LVAはリンパ駆出能が残存している集合リンパ管と近傍の静脈を吻合することにより、うっ滞したリンパを効率よく静脈内へ還流させることで浮腫を軽減させる外科的治療です。リンパの局所的なうっ滞を解消することにより、さらなる浮腫の悪化や皮下への脂肪沈着の予防につながるだけでなく、蜂窩織炎の頻度を下げる効果も期待できます。

リンパ管の機能障害が軽度の場合は、術後弾性着衣による圧迫が不要となることがありますが、多くの場合は術後も圧迫療法の併用が必要となります。手術は局所麻酔または全身麻酔下で、4~7日間の入院で行っています。

当科で行っているリンパ管静脈吻合術について

手術の効率化を図るため、まず手術に先立ちICG蛍光造影によるリンパ管のマッピング、超音波検査による吻合静脈のマッピングを行います。治療を奏功させるためには、リンパ駆出能が残存している集合リンパ管を探し出すだけでなく、リンパを還流させる静脈の口径や走行を事前に把握することが非常に重要となります。

リンパ管(赤ライン)と静脈(黒ライン)の術前マッピング

リンパ管(赤ライン)と静脈(黒ライン)の術前マッピング

手術では手術用顕微鏡を用いて、皮下脂肪の間にある集合リンパ管と近傍の細い静脈をつなぐ(吻合する)ことで、リンパ管から静脈への逃げ道(バイパス)を作製し、貯留したリンパ液を静脈へ回収させるようにします。(下図)

リンパ管静脈吻合術のシェーマ

リンパ管静脈吻合術のシェーマ

吻合方法には端々吻合、側端吻合の2種類があります。前者は貯留したリンパがすべて静脈内に流入するため排液効率の高い吻合形式ですが、吻合部閉塞時にはリンパが完全に途絶するため手術前より悪化する懸念があります。後者はリンパ管自体の流れを温存しながら静脈へのバイパスを作るため、吻合部閉塞時のリスクが少ない吻合形式ですが、端々吻合と比べて排液効率はやや低下します。

治療効果を上げるためには複数箇所での吻合が望ましいですが、長期的にみると一定の確率で吻合部が閉塞することがわかっているため、やみくもに吻合するのではなく、病状に応じて吻合形式や吻合部位、吻合数などを決めていくことが長期的な治療戦略を練る上でも重要となります。

リンパ管静脈吻合の術中の状態

色素で青く造影されたリンパ管の側壁に穴をあけ、切断した静脈の断端を径0.05mmの縫合針で縫合し、リンパ管から静脈への逃げ道(バイパス)を作製する。

当科では治療効果を判定するために、術後6ヶ月以降で随時ICG蛍光造影やリンパシンチグラフィーによる吻合部開存評価およびリンパ管機能の再評価を行いながら追加吻合の可否や弾性着衣の着脱の可否について検討していきます。

手術動画

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実際の手術症例

右乳がん術後 右上肢続発性リンパ浮腫
右乳がん術後 右上肢続発性リンパ浮腫

本症例では圧迫療法が不要となりました。

※治療効果には個人差があります。

子宮がん術後 右下肢続発性リンパ浮腫
子宮がん術後 右下肢続発性リンパ浮腫

本症例では2回のリンパ管静脈吻合術を行いました。1回目では主に下腿を中心に吻合を行い、膝下において浮腫の改善が得られました。その後のICG蛍光造影では、術前には同定できなかった大腿部リンパ管が観察されたため、2回目の手術では大腿部を中心に追加吻合を行いました。

※治療効果には個人差があります。

受診をご希望の方へ

リンパ浮腫の治療において肝心なことは、現在の浮腫の状態がどの病期に属するのかを判断し、その病期に応じた治療方法を選択することです。このために当院では、リンパ浮腫ドレナージ療法の専門看護師が形成外科と共同で患者さんの診察にあたり手術適応の有無なども相談して決定しております。リンパ浮腫でお悩みの方はご相談ください。

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Performance 研究・業績

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