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顔面神経麻痺はその発症原因によって耳鼻科、神経内科、脳外科など様々な診療科で扱われる、日常的に比較的よく遭遇する疾患ですが、急性期の機能不全のみに目が向けられ、慢性期の機能異常である「表情がゆがんでいる(麻痺の残存)」「顔面のこわばり(顔面拘縮)」や「口の動きに連動して瞼が閉じる(病的共同運動)」などの後遺症に悩み、苦しんでいる患者さんは決して少なくないのが実情です。多くの場合、眉毛下垂による視野狭窄(視野が狭くなる)、兎眼(瞼が閉じられない)などの眼症状のほか、口唇運動が障害され、安静時、口唇運動時における口唇の非対称性変形を生じます。
これらの変形は外見だけでなく、口まわりの筋力が低下することにより、水が口角から漏れたり、言葉がはっきり喋れなくなるなど摂食・構音機能にも影響を及ぼし、しばしば精神的苦痛を伴い、QOL(生活の質)の低下を招きます。
頻度が高いのはベル麻痺ですが、多くの場合は投薬などの保存的治療でかなりの程度まで回復します。それに対して、外傷や腫瘍切除後によるものは、神経切断や神経損傷の程度が大きいものが多く、保存的治療だけでは回復が悪く手術を要するものがあります。
当科では、麻痺の程度や発症からの時期などにより、神経自体を修復し早期回復を目指す治療や麻痺による障害が残ってしまった後遺症に対する治療を行っております。特に保存的治療によって十分に改善が得られない場合(陳旧性顔面神経麻痺)や先天性顔面神経麻痺については、麻痺の程度に応じて様々な形成外科的な手術手技を用いて改善を図ります。
手術は大きく分けて安静の状態での顔面の対称性をはかる静的再建術と、閉瞼(眼を閉じる)・笑いなどの顔面の表情筋運動の回復を目的とする動的再建術とに分けられます。
当科は慶応義塾大学病院形成外科顔面神経麻痺再建チームの一員となっており、難治例については隔月の専門外来・カンファレンスにより治療方針をたて、必要に応じて再建チームによる手術を行っております。
神経再建術
耳下腺腫瘍切除後などで顔面神経を切除した場合でも、早期に神経移植を行うことで改善が見込まれます。脳腫瘍術後や頭部外傷後に発症した顔面神経麻痺においては、損傷した側の顔面神経再建では改善は望めませんが、舌を動かす舌下神経や物を咬む咬筋を支配する咬筋(三叉)神経など他の運動神経を用いることで回復が期待できます。
特に咬筋神経は、顔面神経や舌下神経に比べて、麻痺した表情筋への力強い再支配が期待できるだけでなく、脳の可塑性により、しばしば比較的早期から咬む動作を行うことなく口唇挙上が可能となることが利点として挙げられます。また、神経移植による機能回復が見込めない場合は、筋膜移植による吊り上げ(静的再建術)を併用することで整容面の改善を図り、早期社会復帰を目指すようにするなどの工夫を行っております。
発症して1年以上経過すると、神経支配を受けなくなった表情筋は筋委縮(脱神経性萎縮といいます)をきたします。この状態で神経再建を行っても一度委縮した表情筋機能が十分に回復することは難しく、麻痺の部位や程度に応じて静的再建術または動的再建術などを行います。
顔面神経麻痺患者の多くにみられる症状の一つで、前頭筋(眉を挙げておでこの皺をつくる筋肉)が麻痺することにより、麻痺側の眉毛や瞼の皮膚が垂れ下がることで瞼が重くなり、視野が狭くなるなどの症状がみられます。下がった瞼を持ち上げようとして無意識に健側(麻痺していない側)の前頭筋を代償的に挙げようとするため、左右差が強調されます。
主に眉毛上の皮膚を約1cm幅で切除して吊り上げることにより左右のバランスを整えますが、軽度下垂の場合は、麻痺側または健側の上眼瞼形成術により対応できることがあります。
眉毛下垂の程度が強く、かつ上眼瞼の下垂も強い場合は、皮膚切除の切開から前頭筋のタッキング(縫い縮める)と眼輪筋(瞼を閉じる筋肉)の吊り上げ術を併用して確実な挙上を図ります。いずれも動的再建のように額にしわを寄せるなどの動きを再現することはできませんが、多くの場合、外来局所麻酔下で行うことが可能です。
瞼を閉じる筋肉である眼輪筋が麻痺することにより、兎眼(瞼を閉じられない状態)や下眼瞼外反(下まぶたが外側にめくれ、赤い結膜が露出している状態)により眼が乾燥し、異物感や痛みを感じたり、涙が出やすくなるなどの症状を呈します。眼球が常に露出しているため、乾燥して傷つきやすくなり、角膜炎や角膜潰瘍などを併発し、視力低下を招くこともあります。
眼輪筋麻痺が軽度で、兎眼による角膜障害も軽度の場合は、静的再建術として、瞼板吊り上げ(瞼板という軟骨性支持組織を外側にけん引する)や大腿筋膜(太ももの筋肉を包んでいる薄くて硬い膜)を用いた吊り上げなどを行っています。
眼輪筋麻痺が中等度から重度で角膜障害をきたしている場合は、動的再建術である側頭筋移行術を行うことで、洗顔する時など瞼を閉じたいときに、咬む動作を意識的に行うことで瞼を閉じることが可能となります。
下垂の程度が軽度の場合や高齢者では、鼻唇溝(ほうれい線)皮膚切除や大腿筋膜や縫合糸による吊り上げなどの静的再建術を行います。これらの方法では後戻りがあるものの、局所麻酔かつ低侵襲で改善が得られる点では患者様の満足度は比較的高い手術です。頬が動かず笑えないことに対しては、神経血管柄付き遊離筋肉移植による自然な笑いの再建を行っています。
主に顔面神経下顎縁枝の麻痺で生じるもので、泣いたり笑ったりするときに口角や下口唇が斜め下に動かない、麻痺していない方向に引っ張られるなどの変形をきたします。これは、口角下制筋(口角を下方に引き、悲しみの表情をつくる筋肉)や下唇下制筋(下唇を下外方に引き、誠実の表情をつくる筋肉)などの下制筋群が麻痺することで起こります。
治療としては、左右のバランスを取る目的で大腿筋膜移植による静的再建術を行います。手術を希望されない方には、健側の下制筋群へボツリヌストキシン(ボトックスⓇ)注射を行い、健側の筋収縮を弱めることで左右のバランスを図ります。
年2~3回の反復投与で整容的効果は得られます。
ベル麻痺やハント症候群などの末梢性顔面神経麻痺により高度の神経障害をきたした場合、顔面神経の回復過程において、神経の迷入再生による病的共同運動(元の神経回路とは異なる方向に神経再生し、本来支配すべきでない表情筋を誤って再支配してしまう状態)や顔面拘縮(表情筋のひきつれ)が出現します。
このような後遺症に対しては、まず表情筋に対する伸長マッサージや脳の可塑性を利用したリハビリテーション(ミラーバイオフィードバック法など)を行いますが、症状の改善が乏しい場合は、ボトックスの局注療法や表情筋部分切除術(拘縮や病的共同運動の原因となっている表情筋の一部を切除する)、神経移植術などを適宜組み合わせて治療を行っています。
当科では早期より顔面神経麻痺専門外来を開設し、積極的に治療を行っております。顔面神経麻痺による顔のゆがみ、異常な動きなどでお困りの患者様は、是非当科にご相談下さい。
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